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第7弾だよ。


by tsado17

約束(その2)

                 ・・・・・・・・★5・・・・・・・・
小学4年生。性の違いに強い関心を持ちはじめいた。早熟な悪ガキであった。気になっていたクラスの女の子の小森さんに向かって、ただ注意をひきつけたいだけで、「オマンコ、見せろ。オマンコ、やらせろ」というようなことを言って意地悪していた。皆に蛮勇をみせたいばかりに、女子便所へそっと忍び込んでオシッコをする小森さんを、戸の下の隙間から覗いたりもしていた。小森さんはそんな俺の幼稚な行動を冷たい視線で無視していた。というわけでもなかった。俺の覗きは知っていた風で、わざと見えやすいように陰部の位置をずらしたような気もしていた。小森さんの陰部から噴き出るオシッコをうっとりと眺めたのが、漠然と、女はわからない、女は魔物だ、と感じた最初の瞬間であったような気がする。

そのときの担任、佐々木先生は、すらりとしたスタイル、若くて涼しい眼をした細面の美人。
始業式の日、始めて会ったときに恋に落ちてしまった。
細長いきれいな手、ショートカットの下の濡れたようなうなじ、ふくらはぎからキュッと引き締まった足首。目が引き付けられ、心を奪われた。透明感のある妖精のような女性。先生の声は清らかな天使の囁き。聞いているうちにうっとりとして、とろんとした目つきの忘我の境地。言っている内容など、片方の耳からもう片方の耳に通り抜けていた。
「斉藤君、聞いてるの?」と、先生に頭をこずかれ、我に返るのだった。それすらもうれしかった。
子供の無邪気を装って、やたら先生にまとわりつき、手や太腿、腰周りをねちっこく触っていた気がする。後ろから抱きついて、弾力のあるオッパイをもろに掴んでしまい、心臓が破裂しそうになった。そのときだけはきつく睨まれ、手を強く叩かれた。
夜は夜で、寝ながら夢うつつに、歳とった小うるさい母親を先生にすり替えて、一緒にお風呂に入りオッパイに吸いついたり、膝枕に顔を埋めて陰部の匂いを嗅いだり、性的妄想を繰り返していた。様々のシュチュエーションで先生との会話をつくりあげ、空想を楽しんだ。
昼も夜も片時も忘れない、心をときめかす存在だった。

その身も世もないほどに憧れていた先生に厳しく叱責された。
さも汚らわしい物を見るかのように、魅力的な澄んだ眼を濁らせて、厳しく叱責された。

「斉藤君。トイレの小森さんを覗いているですって!」
「君って子は! 最低ね! 本当に、イヤラシイ! 大きくなったら立派なチカンになるわ。ケガラワシイったらありゃしない。その手でもう先生に触らないでね。ゾッとするわ。先生、軽蔑します」
「恥ずかしくないの。あなたのような不潔な子、大嫌い。許せないわ。廊下に立ってしばらく反省しなさい」

顔でナパーム弾が炸裂したかのように恥ずかしかった。
大好きな憧れの女性の容赦ない罵倒。痛烈な拒絶。
傷ついた。
悔しくて悔しくて、眼に涙をためていた。先生は、反省して泣いていると思ったようだ。

小森さんが担任に告げ口したわけではない。小森さんは、毅然としていて、そんな卑怯なことからも超越していた。
往々にして美人とブスはつるむが、告げ口したのはそのブスの方の片割れ、希美だった。
希美は俺に好意を抱いていた。ヤキモチから垂れ込んだようだった。

わが家は金持ちではなかったが、古い木造アパートを一棟、隣りの敷地に所有していた。希美は、そこの住人で、水商売の母親と若い男と一緒に住んでいた。
「インバイの娘だから、ノゾミちゃんと遊んではいけないよ」と母に強く言われていた。よくない言葉と感じていたが、インバイの意味がよくわからなかった。
母親は、立川の歓楽街で働いていたようだ。夕方になると、ケバい化粧をして露出度の高い服装で出ていく。子供心にもミニスカートにハイヒール履き尻を振って歩く姿が滑稽に思われていた。

禁じられたら破りたくなる。腕白な男の子の良識は所持していた。
学校から帰ったら、近くだから希美と遊ぶのは自然の流れ。それに、希美は男の子のようなさっぱりした気性。一緒に遊んでいても楽しかった。母親からもらう、子供にしては多額の小遣いで、駄菓子屋を二人して楽しんでいた。

小森さんにちょっかいを出していた頃、久し振り希美の部屋を訪れた。
「ユキちゃん、タカちゃんがトイレを覗いてるの知ってるよ」
「バレてたか」
「ユキちゃんのオマンコ、そんなに見たいの?」
「うん、見たい。小森は美人だから、ノゾミのとは違うような気がしてな」
「どうだった?」
「お前のとあまり変わりなかったぞ」
「よかった」
「でも、お前のパンツ、汚いけど、小森のはきれいだった」 

「タカちゃん、久し振り、お医者さんごっこしようか。私のオマンコなら、いくらでも見せてやるよ。もちろん、触ってもいいよ」
「う~ん、どうしようかな」
「それに、ノゾミのオマンコに毛が生えてきたんよ。チョロンとした薄いのだけど。見たいだろ」
「フ~ン」
「ヒロニイチャンに聞いたら、インモウって言うんだって。そのうち、オカアチャンみたいに黒いのでふさふさになるって」

「タカちゃん、お医者さんごっこなんて子供のやることだよ。それより、オマンコしようよ」
「何だよ。オマンコするって。オマンコって、ノゾミのオシッコ出すところだろ」
「ううん。オカアチャンとヒロニイチャンがやっていることもオマンコって言うんだって」
「フ~ン、何、やるんだ?」
「うちのオカアチャンとヒロニイチャン、夜になったら、ハアハア言いながらレスリングみたいなこと、やってるんだ。それ、オマンコって言うんだって。すっごく気持ち良いんだって。ヒロニイチャンが教えてくれた」
「変な声を上げて激しく動くから、私、目を覚ますの。喉が渇くみたいで水を持ってくるように言われるの」
「ヒロニイチャンのチンチンをオカアチャンのオマンコの穴に入れるんだって」
「あんな小さいところに、チンチン、入るのか?」

「ノゾミ。この前、お前のオマンコ、舐めたとき、しょっぱかったぞ。それに、お前のお尻、ウンコの匂いがした」
「今はお風呂で綺麗に洗っているから、大丈夫。そうしないと、ヒロニイチャン、怒るんだもん」
「私だけじゃないよ。佐々木先生のオマンコもきっとしょっぱいよ。お尻もウンチ臭いよ」
「嘘だ! 佐々木先生はお前と違う。ウンチなんか絶対にしない! オナラもしない!」
「だって、ユキちゃんもするもん。だから、佐々木先生も絶対する!」
[嘘つき! 俺、怒るぞ]
「ヒロニイチャンが言ってたんだ。どんな綺麗な女の人も、屁もすりゃ糞もするって。ノゾミ、それ、聞いて安心したんだもん」
「佐々木先生はするわけないだろ。お前なんかと違うわい!」

「佐々木先生ね。虫も殺さぬ可愛い顔をしていて、あれで男好きの発展家なんだって」
「男好きの発展家って、何だ」
「オマンコが好きで、いろいろな男とオマンコするってことみたいだよ」
「先生の悪口、言うな! 俺、先生のことを思うと、胸がキューンと痛くなるんだ」
「オカアチャン、佐々木先生を見たんだって。駅前のホテル『憩い』の廊下で、ハンサムな高橋先生と一緒に入ってきたのにすれ違ったんだって」
「嘘、つくな! 高橋先生って、結婚しているんだろ。小森先生がそんなこと、するわけがない」
「あのホテル、オマンコするところなんだよ。オカアチャン、仕事でよく使うんだって」 

「佐々木先生、このまえ、首にネッカチーフきつく巻いてたよね。ノゾミ、見たんだ。あの下に、赤くキスマーク、ついてたの。オカアチャン、ヒロニイチャンによくつけられているから、ノゾミ、知っているんだ。あれは、絶対キスマークだよ。オマンコやってるとき、高橋につけられたんだよ」
「嘘つき! それ以上、言ったら、お前と絶交だ」


大好きな憧れの女性の容赦ない罵倒。痛烈な拒絶。
傷ついた。
子供心にも、皆の前での、面と向かった侮辱は許せなかった。天邪鬼の血が燃え上がる。

それからは先生にわざと聞こえるように、イヤラシイと思われる言葉を連発したんさ。
「俺、先生のオマンコ、見てみたいな。インモウがふさふさしているんだろ。ノゾミが言ってたよ」
「先生、オナラもする、ウンコもするんだってな。ノゾミが言ってたよ」
「先生も男とオマンコしてるんだって。ノゾミが言ってたよ」
「先生、ネッカチーフでキスマーク、隠しているんだってな。ノゾミが見たってよ」
告げ口した希美への怒りもあり、希美をいつも引き合いに出した。
先生は、青筋を立てて怒ったが、俺は平然としていた。
挙句の果ては、母が学校に呼ばれた。問題児、斉藤君の誕生よ。
希美もからんでいると先生は考え、希美の母親も学校に呼ばれた。が、事態は急変。あっけなく騒ぎは沈静化してしまった。
それからは、先生は俺と希美に目を合わせることがなくなった。腫れ物にでも触るように扱った。
俺も、先生の身体に触れるようなことはしなくなった。先生への憧憬は急速にしぼんでしまっていた。

どんな事情があったのか、子供にはよくわからなかった。
大人の世界は子供の思っている以上に複雑で入り組んでいるんだと、ぼんやりと意識していた。

まもなく、高橋先生は他校に転勤となった。
期を同じくして、佐々木先生が退職した。
「先生、一身上の都合で、教師を辞めることにしました」

好きだった女との最初の別れ。俺は何の感傷もなかった。
先生は希美の顔を恨みたらしく見ていたような気もする。

佐々木先生、若くて綺麗なだけで、教育的な配慮に欠けた軽薄な女だったと今はわかる。
でも、俺には、生涯、忘れられない存在となった。

まず、教師というやつを信用しなくなった。
本気で愛した人間に裏切られる我が人生を暗示させる出来事だった。

そして、
俺のトラウマの根源。
潔癖な道徳観憎悪の原点。
偽善者ぶった権力への反抗の起爆力。





                 ・・・・・・・・★6・・・・・・・・
中学・高校は、問題児の先行きを心配した両親の強い意向で質実剛健が気風の私立の男子校に通わされた。
勉強がそんなにできるわけでもなく、スポーツに打ち込むわけでもなく、凡々とした毎日を送っていた。内向的な性格の暗い、目立たない存在。他の生徒に敬遠された。

好色であることには変わりなかった。異常なほどセックスに興味を持ち、勉強の傍ら、エロ雑誌を濫読し、性の知識を積み上げた。裸の女の写真を見ながら、一日一回以上はオナニーに耽った。
電車やバスの中では、揺れで身体の接触できる僥倖を期待して、無意識に綺麗な女性の隣りを陣取った。
暴走族等の不良分子となって社会に反抗するなんてのは興味の対象外。反社会的行為といえば、干してある女性もののパンティーの拝借、家の庭から隣りの女子大生の風呂覗きといった方向に限られていた。
近所の女子高へ通う女子生徒への勇気を振り絞ったガールハントはことごとく失敗。醸し出すエロい雰囲気が嫌われたようだ。

塾へは、女の子と身近に接する唯一の機会だったから、喜んで通った。授業終了後、一人残って、机の中に残していった好きな女の子の鼻をかんだ紙を舐めては興奮し、また、その子が尻にひいていた座布団に顔を埋めて匂いを嗅ぎながら床の上で自慰をした。そんなときだった、佐々木先生の声が聞こえてくるのは。


高校に入ってから、学校が近いらしく、セーラー服姿の小森さんに、時々すれ違った。一段と可愛くなって色気づいていた。いつも違う男の子を引き連れていた。
そんなある日、始めて声をかけられる。
「お~い、変態君、元気にしているか。まだ、覗き、やってる?」
俺は顔を真っ赤にして俯いて通り過ぎた。後ろから、男の子と快活に笑い合う声が聞こえてきた。
希美は、中学に入ると、すぐに引越し。消息が途絶えてしまった。



コンビニでエロ雑誌を立ち読みしていたときだった。制服を着ている女子高生に声をかけられた。
「もしも~し、お取り込み中、申し訳ありません。ひょっとしてタカちゃんじゃ、ございませんか?」
大きな口、アグラをかいた低い鼻、左の口下に薄茶色のホクロ。見覚えがある。
小学生のチビだったのに、ボインボインのセクシーな身体、男好きのする色っぽい顔に変身している。
「ノゾミ? ノゾミだよな。懐かしい。元気だったか。今、どうしてるんだ?」
「オカアチャンと二人で、隣町のマンションに住んでるんだ。ヒロニイチャンとはとうとう破局したのさ。あたしが、あんな中年男、嫌になって、セックスさせてやらなくなったら、家に寄りつかなくなったんだ。オカアチャンは、しばらくがっくりしていたけど、今はもっと若い男に夢中になっているのよ」
「ノゾミんところも、変わったんだ。俺だけか、変らないのは。チッ」
「タカちゃん、そこの喫茶店で珈琲でも飲もうよ」
「ああ、いいぜ」

「私、タカちゃんにはすっごく感謝しているんだ。だって、誰も遊んでくれなくなったとき、タカちゃんだけは変わらなく優しくしてくれたもの。うれしかった」
「今でもタカちゃんのこと、好きだよ。だけど、傑作だったよな。タカちゃんとセックスの真似事したの、覚えてる?」
「覚えてるさ」
「タカちゃんの小さいチンチン、大きくしようといくらしゃぶっても、全然大きくならないんだもの」
「ノゾミが気持ちよくなるから我慢してって、言うから、我慢して待っていたのに、全然気持ちよくならないし、あきちゃった」
「ノゾミのあそこを舐めているとき、オシッコが漏れてきて変な味がした」
「そんなこともあったっけ」
「ノゾミの穴に入れようとしたけど、全然、入らなかったよな」

「その後、どう。チンチン、大きくなった?」
「もちよ。裸の女の写真を見て、オナニーするときなんか、カチンカチンだぜ」
「私は、あの後、中学時代、毎日のように、ヒロニイチャンとセックスしていたんだ。いろいろと仕込まれた。すっかり、女の身体になってるぞ」

「タカちゃんはどうなの? 女とやってるの?」
「ノゾミ、恥ずかしいんだけど、俺、まだ女とやったことないんだ」
「ウヘェ~、タカちゃん、まだ童貞なんだ」

「タカちゃん、もしタカちゃんさえよかったら、私、タカちゃんの最初の女になってもいいんだけど」
「ほんとかあ! ノゾミ。俺、早く筆おろししたかったんだけど、そのチャンスがなくてさ。よろしくよろしくお願いしま~す」
「じゃあ、これから、私のマンション行こうか。オカアチャンは夜中にならないと帰って来ないしさ。ここから15分くらいのところなんだ」
「ウワァ~、興奮するなあ。何か、用意するものはあっか?」
「何にもないよ。コンドームはオカアチャンの鏡台にたくさん入っているし、歯ブラシは、私のでいいよね」
「コンドーム、使うんか。初体験だ。ドキドキするな。俺、はめ方、分かるかな」
「始めは、ノゾミが、セッティングしてやっから、心配すんな。その代わり、タカちゃん、自転車、こいでよ。私、後ろに立ち乗りするからさ」
「オーケー、レッツ・ゴー!」


「ノゾミ、よかったあ! 感激したあ! オナニーなんかと比較にならないな。最高によかったあ! 本物はやっぱり全然違うな。よかったあ!」
「でしょう。私も良かったよ。タカちゃん、テクニックはないけど、激しいんだもの」
「俺、ノゾミのこと、好きになった。また来てもいいか?」
「もちよ。私も、タカちゃん、好きだもの」

「タカちゃん、お願いがあるんだ。来たとき、ノゾミに算数、教えてくれない? 私、卒業がかかっているんだ」
「もちろん教えるよ。ノゾミ、代わりに、俺にセックスのテクニック、教えてくれよ」
「いいわよ。ギンギン、鍛えてやるよ」

希美は数学の先生に言われたそうだ。
「せめて、小学校高学年の算数ができるようになりなさい。それができないと、社会に出てから本当に困るよ。宿題は良いから、この算数のドリルを毎日やりなさい。そうすれば、卒業できるように取り計らいます」
自費で算数のドリルを買ってくれ、放課後、居残って算数も教えてくれたそうだ。その度に触られたけれども、生徒思いの優しい先生だったのだそうだ。
 

エロ雑誌でのせんずりは、卒業することができた。 
高校卒業まで、週3回のペースで希美のマンションに通っていた。家には、友達のところで勉強してくると言っていた。嘘ではなかった。
セックスの合間、合間に、ノゾミは算数のドリル、俺は数学の問題集をやっていた。次の性交という目的があるから、勉強ははかどった。
最高8回という記録を作ったが、普段は、2、3回のことが多かった。

数学の試験で、始めてベストテンの順位を取った。
母親は喜んだ。それからは、数学の問題集を持って、夜、出かけるのを好ましい目で見るようになった。

希美の上に乗って出し入れしている最中に、希美の母親が帰ってくることもあった。
「オカアチャン、算数のドリル、すごく進んだよ。今、タカちゃんと休憩中なんだ」
「あら、タカちゃん、久し振り。ノゾミに算数、教えてくれているんだってね。ノゾミ、可愛がってね」
あっけらかんとしたものだった。この親子には、世間の常識というものを考える必要がなかった。

希美は、高校を卒業すると、美容師の学校に通い始めた。
「オカアチャン、新しい男をマンションに引き入れたんで、ノゾミ、マンションを出ることにしたんだ。タカちゃん、今まで有難うね」
「ノゾミ、こちらこそ、感謝しているよ」
「あたしの夢、普通の平凡な家庭を作ることなの。私の家、普通でないの、自分でもわかってた。子供の頃、ずーと、タカちゃんの家が羨ましかったんだぞ。知ってた?」
「悪い。知らなかった。ノゾミ、元気でな。その夢、実現しろよ」


  


               ・・・・・・・・★7・・・・・・・・
大学に入って1年、バイトと女に明け暮れた。出席日数が成績に必須の科目以外は、授業にほとんど出なかった。
が、一方で、小説、詩集、文学評論、哲学等の分野の本を、新書から全集まで、猛烈な勢いで読んだ。
アダルト関係の猥褻な本は高校時代で卒業していた。

希美に鍛えられた性交のテクニックには、重宝した。なんとか落した女達を歓ばせ、女達の方から、2回、3回と逢うことを望まれることが多かった。
常に複数の女と親密に関係。女の素晴らしさといやらしさを人並み以上に経験しながら、男を磨いていった。

大学2年を過ぎると、女漁りには飽きがきていた。やれる女のストックが十分あり、新しい女を獲得する必要はもうなかったのだ。

女への関心が薄れると、世の中で当たり前として罷り通っていることに疑問を持つようなり、物事を深く考えるようになっていった。
詩人になろうと勢い込み、気負って生きていた。
拙い詩をたくさん書き、詩人の心、詩人の眼を研ぎ澄ますことに夢中になっていた。


泣かず飛ばずの小劇団に属する尚美は、劇作家を夢見る、演劇一途の女子学生。
小柄で、凹凸の少ない、まずそうな肉体。少しやぶにらみの眼を持つ、衆人の認めるブス顔。取り柄は、抜けるような白い肌と若さだけ。

その尚美が居酒屋でなよなよしたヤサ男に振られる場面に遭遇する。泣きながら、男を小気味よく打ちのめす言葉の迫力に感嘆。普段なら、外見的に全く興味の対象外の女なのだが、俺の下半身が何故かヤル気マンマン。詩人の心が女の言葉の魔力に軟派されたのかもしれない。

「彼氏、チャラい女とずらかっちゃたな。男のいない部屋に、これから一人寂しく帰るんだ。ちょっと同情するな。もし、もしよろしかったら、独り寝の無聊をお慰め致しましょうか?」
「君、それだけ言えるってことは、セックスに自信があるんだろうな。私は相当な好き者よ。そんな私を満足させられて?」
「悔し涙を歓びの涙に変えるくらいの自信はありまっせ」
「よっしゃ、それだけ言えるんなら、私のアパートに一緒に帰ろうか」
意気投合。タクシーの中でずっと熱い熱いキス。
部屋に転がり込むと、すぐに服を脱ぎ捨てる。躊躇することなく全裸で抱き合う。
身体の秘境への羞恥心をかなぐり捨てたキス。あられもない格好での抱合。お互いが、真面目そうな外面とは裏腹に、ただれた乱れた性的嗜好を内面に所有する似た者同志であることを得心。出会いを喜び、今後も体のつきあいを続けていくことを了承しあった。

近くのコンビニでカップラーメン4個とコンドーム半ダースを買って休憩し、再び、本腰を入れて、歓び合いに没入。
調子に乗って、俺が、後ろからはめながら、詩人として生きる決意を宣言。女も、俺の上に跨って、劇団を立ち上げるなどと、夢を語る。
女の斬新で、かつ、危うい演劇論に耳を傾けながら、乳房、性器、肛門と、身体中を舐めまくる。しゃぶりまくる。
女、上気した心、恍惚の身体、陶酔の表情。
そして、二人して、思い通りに行かない人生に怨みと怒りをぶっつけながら、分厚いカーテンの隙間から、朝の光がさしてくるまで、気力と体力の続く限り、ただれた乱れた性交に没頭。

激しく文学論、そして、激しく性交。熱く文学論、そして、熱く性交。青臭い文学論、そして、息臭い性交。
これも、また青春。
性交と勉強とに交互に耽った希美と一年を思い出す。人間、形を変えて、同じようなことをするもんだと、思わず笑ってしまった。

尚美に耳の痛い指摘もされた。
「君、詩人になるといきがっているけど、詩人じゃ飯は喰えないわよ」
「大きなお世話だ。そんなこと、百も承知さ。俺は大学を出たら、普通に就職するつもりでいる。でも、詩人の看板は降ろさない。詩を書き続けるよ。詩は飯を喰う道具じゃない。それが俺の矜持さ」
「君の詩、いくつか読んでみたけど、自分の容貌にコンプレックスがあるみたいね。美を憧憬化、理想化し過ぎよ。美と醜は切り離せないと捉えてみる必要があるんじゃない? 私が今書いている戯曲は、己の中の美しさと醜さを巧みに使い分けて、女達を惹きつける不倫教師の話よ」
てやんでえ、容貌にコンプレックスを持っているのはてめえだろが。いつも、頭の軽いハンサム男を自分の傍に侍らせたがっている。

「でも、とても気に入った詩が一つあったわ。『オシッコする女』は秀逸ね。何度か口ずさんでみたわ。可愛い少女が最も美しく輝くときって、オシッコをしている醜い瞬間なのよね。わかるなあ」
何、言ってんだい。あれは汚れのない子供の感受性を素直に表現しただけだい。
「それから、『奇跡のボボを持つ女』という詩も良いわね。ジーンときたわ。自分の醜さに心を痛めていた魔女ボボが、配下のエンゼル、ヴァジャイを使って、男達に快楽を撒き散らし続け、美の女神エクスタシスになってしまうというストーリー仕立ての詩。面白い試みだわ。醜悪は情況次第で美に昇華するのよね。美と醜は切り離せないコインの裏表なのよ」
尚美、その詩、お前のことをイメージして書いたんだだけどなあ。気がつかれなくて良かった。
「ねえ、ねえ、斎藤君、私のオシッコ、飲んでみない? 私、まだ飲まれたことがないのよ。焼けつくような私の願望。醜悪で汚いものって、すごく美味かもしれないわよ」
冗談じゃないやい。『オシッコする女』のモデルの女性のオシッコなら歓んで飲む。だけど、不細工なお前のオシッコを飲むと、その場で吐きそうな気がするわ。

容姿のことを忘れて、陰部を激しく交えて通じてみると、尚美は、高いソプラノで歓喜の歌を響かせる、高感度の肉体と高性能の女性器を持つ貴重な女だった。今まで交わった中で最高の道具の持ち主だと思う。ペニスを割れ目に差し込んでいると、きつい締め付けがきて、股間が快感にジワリと制圧され、あっという間に昇天に導かれる。我を忘れて大声で叫んでいたと思う。
できることなら、もうしばらく彼女と付き合っていたかった。というより、もうしばらく彼女の奇跡の女性器を味わっていたかった。
だが、やはりヤサ男の演劇青年と付き合い出して、1ヶ月で破局。
俺は彼女の美意識の許せる範囲に存在していなかったようだ。
自信のあるブスは美に対して決して妥協をしないことを納得。
オシッコを飲んでいたら、もう少し付き合いが伸びていたのかなあ。

尚美、今は新進の劇作家として活躍している。
俺と交わった、才能のある女は、俺を踏み台にするわけでもないのだが、大きな舞台にのし上がっていく。俺って、才女に幸運をもたらす特異な星の下に生まれているのかもしれない。
by tsado17 | 2013-05-30 02:26 | 約束